大企業の社長をコーチングするために必要なことは?

|カテゴリ:企業経営とコーチング


コーチングを学んだ人の多くは、「早くこのスキルを使って、人を成功に導きたい」と思われることでしょう。「人を幸せに導きたい」という思いは、コーチとしてとても大切です。

コーチングには、人生全般を扱うライフコーチ、スポーツ選手のコーチ、恋愛・結婚コーチなど、さまざまなジャンルが存在します。

その中で、ビジネスを成功に導くコーチのことを「ビジネスコーチ」と定義します。

ビジネスコーチを志す場合、経営を成功に導く正しい方法を知っていないと、クライアントの事業を間違った方法に導いてしまう可能性があります。ビジネスコーチは、経営の王道を学び、正しいビジネスの構築方法を指導できるスキルが必要です。

このように、クライアントにとって良いコーチになるためには、相手が求めている自己実現の方向によって、専門的なスキルが必要になります。

このコラムでは、大企業の社長をコーチングするために必要なことについて述べたいと思います。

社長に気に入ってもらうために大切なこと

会社の規模に関わらず、社長のコーチングをするときにも大切なことが一つあります。それは、「社長に心を開いていただき、相談相手に選ばれなければならない」ということです。

中小企業でも、大企業でも、社長はとても忙しいため、社長にとって「時間」はある意味お金以上に貴重なものです。そのような社長から相談相手として選ばれるためには、「時間を割いてでもこの人と話がしたい」「このコーチングセッションの時間が大切だ」と思っていただく必要があります。そのためには、社長に「コーチングセッションを受けると、経営の悩みに対する結論が出せる」と実感していただくことが大事です。

社長にそのように実感していただくために、ビジネスコーチが身につけるべきことは、「認識力」と「知識量」です。

本コラムでは、この2つについて解説したいと思います。

ビジネスコーチとしての認識力

社長の気持ちを理解するための認識力

社長の気持ちを理解

たとえば、ライフコーチングとして、「人を幸せにしたい」と思う場合のことを考えてみます。ライフコーチ自身が環境や他人の存在などの外的要素に関わりなく、長く続く「幸せ」な感覚をつかんでいると、相手の気持ちを深く理解し、相手がどうすれば良いのかが分かります。

では、大企業の社長の気持ちを理解するためには、何が必要でしょうか。

それが、経営に関する認識力を高めることです。ビジネスコーチの経営に関する認識力が高まるほど、社長の悩みを自分のことのように理解し、感じ取ることができるようになります。

社長の責任がどれほど大きいものであるか、ということを深く理解できれば、相槌のうち方や質問の質が違ってきます。

経営に関する認識力が高まると

大企業の社長になると、「経営の悟り」とでもいうべき力を備えています。普通の人では到底耐えきれないほどの大きな悩みを抱えつつ、平常心と自信にあふれている方が多くいらっしゃるのです。

ですから、ビジネスコーチの認識力が高く、そのあたりが深く理解できるようになってくると、相手の思いを汲み取ることができ、信頼関係を築くことができるのです。

「このコーチとはどの程度認識を共有できるか」ということを、社長は感じ取ります。「このコーチは私のことをとてもよく理解してくれる」と思ってもらえれば、ラポールがしっかりと取れ、コーチの質問によって社長に気づきを与えられるようになります。

そのためにも、大企業の社長を成功に導くビジネスコーチは、会社経営に関する認識力を高める必要があるのです。

ビジネスコーチとしての知識量

話が的を射ているか

話の的を射る

ビジネスコーチが社長に対して自分の経験や知識を話すときには、その話が的を射ている必要があります。当然のことのようですが、これは実に大切なことです。

社長にとって的を射た話が、1回のセッションの中で、いくつかあったならば、それは強く印象づけられ、たとえビジネスコーチとしての経験が浅かったとしても、ごく自然に立ち位置が変わってきて、信頼関係が強固になります。

最初は、社長の方が立ち位置が上だったとしても、徐々に社長が教わる姿勢を取ってくださるようになってきます。

現在の社長の悩みに対して、的を射る話が毎回できれば、毎月のセッション回数が増え、セッションフィーも自然に上がります。

的確な話は知識量から

そのような、社長のモヤモヤ感を解消するために的確な話ができるかどうかは、やはり知識量です。

知識量があれば、経営に関するさまざまな問題の本質をとらえ、洞察することができます。そして、社長の悩みの本質を見抜くことができれば、深く共感できます。さらに、問題の解決方法が浮かんできます。

解決法は質問形式で社長に決めてもらう

解決法は質問形式で

コーチはクライアントに気付きを与えることが仕事ですから、この時に解決方法を押し付けずに、選択肢を示し、質問形式で社長に決めてもらえるように導きます。

その質問の仕方としては、例えば「この問題の本質はこの部分だと思いますから、Aという方法が考えられますね。また、Bという方法でも解決できるかもしれません。また第三の道として、Cという方法も考えられますね。社長が最も成果を上げられると思われるのはどの方法ですか?」「ピーター・ドラッカーはこのように言っていますが、このケースに当てはめた場合、どんな解決方法が考えられますか?」という具合です。

社長のビジネスコーチで気づきを与えた事例

私が実際に社長へのビジネスコーチングを行っているときにお話しをした例をいくつか述べてみましょう。

社員に考えをうまく説明できない社長への話

営業会議でトラブル

埼玉県にある会社の社長へのコーチングセッションでの会話です。クライアントの社長は、幹部社員からの意見について迷っていました。

この会社の商圏の中に競合他社が参入し、社内で問題になっていたのです。営業会議のときに幹部社員から「社長、競合が増えているので、相手をつぶすような戦略を立てる必要があります」という意見でした。

その会議の直後に行ったコーチングセッションで、社長は何かモヤモヤした気持ちで迷っていることを話してくれました。

そして、「自分の意見を幹部社員にきちんと説明できるように、考えをまとめたい」とのことでした。

そのときに私がお話ししたのは、三国志の英雄の一人、魏の創立者「曹操」のたとえ話でした。

蜀や呉との闘いが激化している中で、魏の将軍たちが競合の台頭に心配になってきました。

ところが曹操は将軍たちに「戦いとは敵を減らすことではない。味方を増やすことに要諦あるのだ」と述べ、将兵の強みを評価し、多くの優れた人材を積極的に採用する方針を推進しました。

魏はいずれ中原を統一するのですが、曹操はその足掛かりとして味方を増やすことで構築しました。

この話を聞いた社長は、「それをやりたい。これを経営方針にしよう!」と、モヤモヤがいっきに晴れて、モチベーションが上がりました。その後、競合する業者が傘下に加わるメリットを構築し、社業を大きく発展させました。

言うことを聞かない幹部の対応に困った社長への話

リンカーン大統領のエピソード

また別のコーチングセッションでの話です。会社の幹部社員の中に、「仕事はできるが、人物として問題のある人」「人物は出来ているが、実務能力が低い部長」がいました。そのような幹部社員が、あり得ないような失態を演じた事件がありました。腹に据えかねた社長は幹部社員を怒鳴りつけ、そのような人たちを切ろうかどうか迷っていました。

会社をさらに成長させるためには、経営幹部の育成が大切です。しかし、幹部社員は社長の意図に反して「私たちはいつ辞めるかわからないし」と言っている状態でした。

この会社は建築系の会社だったのですが、社長は、「この業界は一癖ある人が多い業界なんだ」と言います。社長はコーチングセッションの中で、「理念が固まって浸透させていったら、幹部社員たちは会社を離れていくのかな」と悩んでいるご様子でした。

そこで私は、アメリカの偉大な大統領リンカーンの話をしました。

アメリカの南北戦争のときに、大統領であるリンカーンのもとに「グラント将軍が大酒飲みだ」ということを参謀から報告がありました。参謀は、そのことをリンカーンに告げ口して、将軍を更迭してもらいたかったのでしょう。

しかし、リンカーンの対応は予想を大きく裏切ったものでした。リンカーンは「そうか。では、将軍の好きな酒の銘柄は何かね。その銘柄がわかったら、他の将軍にも贈ってやってくれ。」と言ったそうです。

この将軍は、大酒飲みという短所がありましたが、度々大きな戦果を挙げていたという強みを重視したのです。

「酒飲みの将軍に酒を贈ってしまったら、真面目に仕事しなくなるのでは」という周囲の心配をよそに、結果は更なる戦果をあげるに至りました。

その話を聞いた社長は、幹部社員の首切りを考えるのではなく、幹部社員の長所を活かし、短所を無効化する組織をつくろうと考えるようになりました。

ビジネスコーチにとっては、目標達成に向けたコーチングを進めながら、社長の経営課題をどのように解決するかを、社長と一緒に考えることも仕事の一つです。やはり、一流のビジネスコーチになるためには、知識の量が常に社長よりも上回っていなければならないことは言うまでもありません。社長の代りに学ぼうと思うことが大事です。人のために学ぼうと考えると、今までよりも有用な知識を探し求め、記憶する意欲が湧いてくるはずです。

ビジネスコーチとして成功する方法

その答えは「よいクライアントを持つこと」

私がビジネスコーチとして駆け出しの頃、ベテランのコーチに「どうしたらよいコーチになれますか?」と質問したことがあります。その答えは、「よいコーチになるためには、よいクライアントを持つことだ」というものでした。

私はそのとき、そのシンプルな返答にあっけにとられましたが、よくよく考えると理にかなっています。

よいクライアントの条件

実力・やる気・相性

では、よいクライアントとは、どんなクライアントでしょうか。それは次の3つに合致するクライアントのことです。

  1. 実力があること (事業才覚、経営資源、徳望、真摯さ等すべてを含みます)
  2. やる気満々であること
  3. 相性がよいこと

条件に合致すると

この3つの条件に合致するクライアントを持てば、成長性が高く、消化力も高いため、コーチングセッションを提供するたびに高い満足度を与えることができます。

また、よいクライアントとのセッションを通じて、ビジネスコーチとしての実力が高まります。

そうなると、善の循環が起き始め、収入も自然に増えていきます。

ビジネスコーチとして独立起業したばかりの方であれば、収入の心配があるかもしれません。しかし、この3つの条件に合致した人をクライアントとして持つことで、ビジネスコーチとして成功することができるでしょう。

私に対してビジネスコーチングのご依頼があったときは、体験セッションのときにクライアントはこの3つの条件に合致するかどうかを判断して、コーチングを引き受けるかどうかを決めています。

「よいコーチになるためには、よいクライアント持つことだ」という答えを聴いたときには拍子抜けしたものですが、今ではそれは正しい答えだったと実感しています。

よいクライアントを持つためには

よいクライアントを持つためには、どうしたらよいのでしょうか。それは、学徳を積み、ビジネスコーチとしての自分を高めることです。

「最高のコーチングを提供したい」と願い続け、自分を高めつづければ、必ず、よいクライアントが集まってきます。

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