経営理念の浸透のためには管理職の能力アップを
|カテゴリ:企業経営とコーチング
社長の思いが詰まった本物の経営理念ができ上がったら、その経営理念を組織全体に浸透させることに力を注ぐことが大切です。
社員たちに心から経営理念に賛同してもらってこそ、組織全体にイノベーションを起こし、優良企業への道が開けてゆくからです。
しかし、朝礼で経営理念を唱和させ、経営理念研修を行うだけでは、理念を浸透させることはできないでしょう。水が高い所から低いところに流れるように、社長をはじめとする管理職たちが立派であってこそ、社員たちに理念が浸透していきます。
そこで、本コラムでは、管理職の能力を高める指針について考えてみたいと思います。
管理職は頼り甲斐のある上司を目指そう
管理職になりたての人が最初にやりがちなことは、部下の見張り役になってしまうことです。部下がしっかり働いているかどうかを監視することが自分の仕事だと思ってしまうのです。
しかし、部下たちの仕事は目に見える部分だけではないので、完全に管理することはできません。管理職は、自らが部下たちの手本となるような仕事をすることで、部下に頼られる存在になります。
頼り甲斐があり、尊敬する上司から「経営理念は大切なものだ」と説かれれば、社員たちは経営理念を受け入れるようになります。
部署の成果を上げる
では、どのような人が頼り甲斐のある上司なのでしょうか。それは、部署の成果を上げることです。そのためには、部下に成果を出してもらわなくてはなりません。
連合艦隊司令長官 山本五十六元帥の次の有名な言葉は、頼りがいのある上司の役割を示しています。
やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば人は動かじ
部下に成果の出し方を教える
この言葉の冒頭にあるように、まず、自分が担当する部署で率先して成果を上げることです。成果を上げることができたら、どうしたら効果的な仕事ができ、成果を上げることができるのか、ということを体系化します。
それを部下に教えることができるようになれば、部下から尊敬される上司への第一歩を踏み出すことができるでしょう。
そのためには、経営方針、行動指針、社是、といった経営理念に基づいた判断をし、仕事をして、成果を上げて見せることからスタートするべきなのです。
部下のモチベーションを高める
つぎに上司は、部下たちのモチベーションを高めることが大事です。前述の山本五十六元帥の言葉は以下のように続きます。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たじ
コミュニケーション力を高めることが重要
つまり、管理職が自ら率先垂範して成果を上げるだけでは、部下は育たず、士気は高まらないのです。管理職は自ら成果を上げる能力を身につけつつ、コミュニケーション力を高めることが重要です。
経営発展コーチングでは、「コミュニケーションとは、良き変化を起こすこと」と定義づけています。部下と対話をしたり、ミーティングなどのコミュニケーションを行ったりした後で、「それ以前にくらべて、良き変化が起きたか」ことを見れば、コミュニケーションの成否は明らかなのです。
コミュニケーションのスキルを体得する
コミュニケーション能力を高めるためには、山本五十六元帥の言葉どおり、「耳を傾け」「承認する」ことがカギになります。コーチになるためのトレーニングを受けると、必ず「傾聴」「承認」というコミュニケーションスキルを学ぶことになります。これらのコミュニケーションスキルを身につけていることは、コーチとしての必須条件ですが、企業の管理職にとっても重要なスキルであると言えるでしょう。
このスキルを体得するためには、「相手を理解する」という心構えを持つことです。いくら正論であっても、一方的に押し付けられた場合には、部下を論破することはできても、心服させることはできません。
ですから、管理職たるものは、部下の心を理解する度量を持ち、コミュニケーションスキルに磨きをかけることが大事なのです。そのような能力を得てこそ、部下の仕事上の悩みを解決に導き、仕事を任せることができるようになります。
仕事において、自分が成長している実感を持ててこそ、部下のモチベーションを高めることができるのです。
部下に対する感謝の念を持つ
山本五十六元帥の言葉は、さらに次のように続きます。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず
管理職としての徳は部下への感謝から
管理職としての徳は、慣性に任せていては出てきません。部下に対して心から感謝できる心境になると、管理職としての徳がにじみ出てきます。部下に対して心から感謝できると、自制心が鍛えられ、部下の不出来を責める気持ちを抑え、自らの指導力の不足を反省するような人になり、徳がにじみ出るようになるのです。
すべては自分の責任
経営の神様 松下幸之助翁は
雨がふっても自分のせい
と喝破し、伝説の経営コンサルタント 一倉定先生は
ポストが赤いのも社長の責任
と説きました。
そのあくまで人や環境のせいにしない人間力が、部下の心をひきつけるのです。それが尊敬される上司の姿であると言えるでしょう。
自分のことよりも他人のことを多く考える
管理職になったら、自分のことよりも、他の人のことを多く考えるように変わっていくことでもまた徳が発生します。
部下に対する思いやりを持ってこそ、部下は心を開きます。心を開いた部下は、プライベートや人生についての悩みをも打ち明けるようになるでしょう。そのような信頼関係が築かれた組織の中でこそ、経営理念は着実に浸透していくのです。
部署の仕事レベルを高める
管理職のコミュニケーション能力が高まると、部下一人ひとりの強みや弱みを的確に把握することができるようになります。そうすると、適材適所で人員を配置することができます。
経営学の開祖であるピーター・ドラッカー先生は、
組織は個人の強みを活かし、弱みを打ち消すためにある
という趣旨の言葉を語っています。
適材適所で人員を配置することができるようになると、会社の仕事レベルが高まります。その上で、部下一人ひとりの弱みを克服できるように指導することで、会社の最大の経営資源である社員たちのさらなる成長を促すことができるのです。それは間違いなく経営理念の浸透に大いに資することになるでしょう。
組織の「横」との連携、「縦」への貢献
他部署と連携を取る
管理職は、会社の中の限られた範囲であってもトップあることは事実です。ですから、自分の部署の成果を中心に考えることは自然なことであると思います。
しかし、自分がトップを務める部署が成果を上げることだけを考えていると、往々にして会社全体の仕事レベルは落ちてしまうことがあります。
部分最適に陥ってしまい、“木を見て森を見ず” という状態になってしまうからです。いわゆるセクショナリズムです。
たとえば、自分の部署が営業部であるとしたら、開発部や、カスタマーサポート部などと連携を取って、会社全体の成果を上げることを目指すべきです。
上司の成功に貢献する
また、管理職にも当然上司がいます。自分が成果を上げることだけに熱中するのではなく、「いかにして上司に成果を上げてもらうか」を考え、上司の成功に貢献する気持ちが大事です。そうであってこそ、上司から引き立てられ、部下から押し上げられて、出世してゆくことができるのです。
このように、上下左右の4方向が正しく見えていることが、管理職として成果を上げるための秘訣であると言えるのです。
組織全体の成功に貢献する管理職こそ、経営理念の体現者であり、そのような徳ある管理職を輩出することが、経営理念の浸透の要諦であると思います。
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