社員の士気向上は本物の経営理念の構築から
|カテゴリ:企業経営とコーチング
「経営理念を作って社員のやる気を高めたい」と考えている経営者は多いと思います。しかし、経営理念を作っただけでは、社員の士気向上は期待できません。
本コラムでは、社員の士気向上のための本物の経営理念のあり方と、経営理念を社員全員に浸透させる方法について考えてみたいと思います。
社員の士気が高まる本物の経営理念のあり方
経営理念は、会社の存在目的や会社が発展するための根拠を示すものであり、社長自身を鼓舞するものであることは、とても大切な事です。また、社員にとっては、それが他人事ではなく、「自分も主役の一人だ」と思える内容であるべきです。
あなたの会社は大丈夫? 経営理念の一般的な現状
ところが、社長が一生懸命考え出した経営理念にもかかわらず、社員の士気向上どころか、社員は同調したふりをしてうなずいているだけ、というケースを非常に多く見受けます。社員は会社から給料を戴いているので、心の内では経営理念に賛同できなくても表面上はうなずいて見せているというわけです。
経営理念は、「組織の存在目的」を示すと同時に、社員一人ひとりが、その会社の一員として働くことの喜びや誇りを心から感じられるようなものでなければ、一見、立派に思える経営理念を構築しても、社員の士気を高めることはできません。
本物の経営理念は、社員一人ひとりに主役意識を与える
社長が創り上げた経営理念を社員が受け入れるかどうかは、経営理念を実践した結果、社員一人ひとりの人生に、大きなプラスを与えることができると感じられるかどうかにかかっています。
さらに、「Win-Win」というスティーブン・コビー博士の言葉は広く浸透していますが、現在では自社とお客様のWinだけではなく、従業員、取引先、関連する社会などとのWinが互いに累乗になっていくようなビジネスモデルが成功しはじめています。
経営理念の中核部分にあたる「基本理念」には、会社とお客様だけでなく、従業員や取引先が価値を感じる内容を盛り込むことが理想的です。
しかしながら、そのような理想的な基本理念を創るだけでは、社員の士気を高めるのに十分ではありません。経営理念を構築する際には、会社の存在目的を表す基本理念に加えて、以下の3つの条件を満たしていくことが社員の士気を高めるために重要です。
社員の士気を向上し、協力を得る3つの条件
1.ロマンを感じる大目標の設定
基本理念は会社の存在目的や価値観を表しているため、言葉としてはどうしても抽象化されてしまっていると思います。しかし、抽象化された言葉を社員全員が共有するのはとても困難です。抽象化された言葉を基にして、社員のやる気や行動に転化するためには、社員が基本理念に強い関心を持ち、基本理念の実現に向けて自分の役割を考える時間を持つ必要があるからです。
社員は日常業務で忙しいはずです。そのため、組織の末端にまで抽象的な価値観を共有することが難しくなります。
そこで、基本理念に込められた抽象的な価値を具体化し、社員に理解しやすい言葉に変換する必要があります。
基本理念が実現した姿は、社会に大きく貢献したロマン溢れるものだと思います。この未来ビジョンを社員全員と共有することができたら、多くの社員は、士気を高めていくことでしょう。
基本理念をビジョン化して共有するためには、基本理念が実現した状態を具体的に数値化して表し、それが実現する時期を設けます。これが「大目標」です。
こうして会社の大目標を設定することで、基本理念にリアリティを与えることができるようになります。全社を挙げて目指すべき大きな目標が決まると、社員たちはロマンを感じられるようになり、日々の仕事により意義を見出すことができます。
この仕事に意義を感じることは、士気向上のための源泉となることは、お判りのことでしょう。
2.成果を確認できる実績を出す
しかし、大目標を実現するには相当の時間がかかりますから、これだけでは継続的に社員の士気を保つことは難しいでしょう。そこで今度は大目標を絵に描いた餅にしないためにも、大目標をブレイクダウンして、ある程度限られた時間の中で実現できる中・小目標を設定し、実施していきます。
中・小目標を達成すべく努力し、一歩一歩実績を積み重ねる中で、価値ある大目標達成に向けて着実に前進しているという実感が湧き、基本理念の実現を信じられるようになってきます。
3.金銭的報酬と精神的報酬の両立
社員たちの士気を高めるために、経営理念に賛同して努力してくれた社員たちに対して正当な報酬を約束することも重要です。
報酬には、金銭的報酬と精神的報酬のふたつがあります。これらを両立させたときに、評価された社員は仕事をすることに幸せを感じ、社員の士気を保つことができます。
金銭的報酬
長年にわたって会社のために貢献してくれた年功者に篤く報いることも大切です。その一方で、経営理念の実現に向けて貢献してくれた社員を評価する仕組みを創り上げることが大事です。
経営理念を賃金制度に反映させ、経営理念に基づいた仕事をしてくれた社員を優遇する仕組みを創ることができれば、経営理念を浸透させ、社員の士気が向上します。そして、経営理念を社風や文化にまで高めることが可能となるでしょう。
精神的報酬
給料を支払う立場にあると、金銭的な報酬の見返りに社員を動かそうと考えがちになるものですが、社長や上司から「君はよく頑張ってくれている。あの働きは素晴らしかった。いつも有り難う」と真心の込もった声を掛けられるだけでも、社員にとっては大きな精神的報酬となり、彼らのモチベーションはグンと高まります。
司馬遷が編纂したとされる史記に、「士は己を知る者の為に死す」という言葉があります。「立派な人なら、真に自分のことを知って、認めてくれる人の為になら、命を擲ってでも応えようとするものだ」という意味の言葉ですが、これは人間の心情を見事に表した言葉だと思います。
人は精神的報酬を非常に重んじるものなのです。社員一人ひとりの強みや美点をよく見て、それを伸ばすように心がける過程で、社員は社長の徳を感じるのだと思います。経営理念の旗の下、多くの社員たちが徳ある社長を慕ってついてくることでしょう。
経営理念を浸透させる時に最終的に必要なのは、社員との強い絆、信頼関係なのです。
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